旧札幌市西区

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螢・納屋を焼く・その他の短編

螢・納屋を焼く・その他の短編

螢・納屋を焼く・その他の短編

題の通りの短編集。全てのお話について書くのは大変(そうでなくても村上春樹の作品は書くのが大変)なので、一番気に入った作品について。気に入ったので少しは書きやすいだろうし。
「めくらやなぎと眠る女」というお話。右の耳が聞こえないいとこと一緒にバスに乗って病院まで連れて行き、いとこが治療を受けている間食堂でコーヒーを飲みながら昔のことを思い、戻ったいとこと帰りのバスを待つというストーリーです。
いとこの思いに的確に答えられないやるせなさ。バスの中の老人たちから感じる言い知れない不安感。コーヒーを飲みながら思い出す記憶の切れ端。違うどこかへ連れて行ってくれるように感じた五月の風。
むう、こうやって書き出すほど陳腐に見えてしまう気がする。
目に見えて心配するべきことはないのに不安になる感情。「胃の奥の方に空気がたまったようなもったりとした感触」。やっぱり言葉に出せなくて悔しくなるなぁ。
ただ、やってきた帰りのバスが見覚えのある古いバスだったというのが救いというかなんというか。ちっぽけなことですが。
どこが気に入ったのかが全く分からないでしょうね。伝えられてないだろうことが口惜しいです。
文章書くってすごいことだ。