旧札幌市西区

http://d.hatena.ne.jp/kei-s/ だったもの

一気に

ぼくと1ルピーの神様 (RHブックス・プラス)

ぼくと1ルピーの神様 (RHブックス・プラス)

インド版「ミリオネア」で、全問正解を勝ち取った主人公。孤児で教養もない主人公だったが、これまでの過酷な半生で体験したことのなかに答えがあった。
キャラクター、情景描写、社会批判、ストーリー、どれをとってもよくできている。最後には、なぜ主人公がクイズに出演しようとしたのかも明かされる。
映画も評判よいらしいので見たい。http://www.big.or.jp/~solar/unlocked.htmlの評論の冒頭で引用されていて、気になっていた小説。
ぼんやりとしてる気味の悪いなにかを、執拗に論理と感情で切り出していく感じ。
で、物語自体もなにか気味の悪い雰囲気をまとったまま進む。
なんだか、舞城王太郎の時代への距離感と、橋本治のそれは似ていたんじゃないかなと思う。

ボクはビリーピルグリムきめこんでさっそうと
ドタバタ喜劇 演じるはダストシュートのゴミのむれ
気が付けば10時
あ〜もう タスケテ神さま キルゴア トラウト

Little Bird Strut スチャダラパー

初のヴォネガット。ずっと気になってて読めていなかったけど、この機会で読めました。
戦争、ヴォネガット自身が第二次世界大戦で体験したドレスデン爆撃を、けいれん的時間旅行者の主人公ビリー・ピルグリムが辿る出来事を通して語る。「時間旅行で悲劇的な過去を変える」のようないかにもSF的な進行はせず、主人公の時間移動によってエピソードが時系列不同に語られる。
死や生に対する価値観を、主人公を誘拐するトラルファマドール星人に託して語るのが、SFとして上手いこと描かれていると思った。「過去も現在も、未来も変えられない」というのが、ストーリー運びだけでなく、死への捉え方として出てくるのが上手。
エピソードのひとつひとつ、言い回しのひとつひとつがとても良い。キリがないくらい引用したい文章が散りばめられてる。有名なのをひとつだけ。

神よ願わくばわたしに変えることのできない物事を受けいれる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ

スローターハウス5 P.246

黄金旅風 (小学館文庫)

黄金旅風 (小学館文庫)

時代小説。徳川秀忠から家光に交代する時代、貿易都市として繁栄した長崎の物語。東南アジアとの貿易、キリスト教の弾圧、権力闘争が絡み合うなか、長崎の民衆の生活を守るために奔走する人々を描く。
読みきるのに結構苦難した。主人公格として描写されてた人物があっけなく退場しちゃったり、ぶつ切りとまでは言わないけど乗れなかった。火消組頭の活躍や幕府勢力との駆け引きなんかは面白かったです。
アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

硬くならずに読めるノンフィクション、「エンタメ・ノンフ」なんて言われるジャンルの本。
ミャンマーの奥地、世界のアヘン系麻薬の60〜70%が生産される「ゴールデン・トライアングル」の一角であるワ州という、ミャンマー政府の権限が及ばず現地の少数民族が統治する地域に入り込み、現地の村に滞在してアヘンを収穫するまでのレポート。
現地のワ人はゲリラの幹部であっても素朴なおっさんであったり、アヘンの原料であるケシを「農業」として栽培する小さな村は、世界と隔絶されたままの営みをつづける人たちであったり、「麻薬生産」のイメージからは程遠い人間臭さ。
これに対して著者も、政治的告発なんかではなく、ただただ興味本位で行動し、実際にアヘンを吸いあまつさえ中毒になったりする。人間臭いにもほどがある。
ミャンマー近代史やアヘン・ヘロインの歴史も語られるが、それよりなにより著者と現地人との交流や生活が面白くてしょうがない。
プロダクティブ・プログラマ -プログラマのための生産性向上術 (THEORY/IN/PRACTICE)

プロダクティブ・プログラマ -プログラマのための生産性向上術 (THEORY/IN/PRACTICE)

言語のリファレンスとかの技術書は読んでも書いてこなかったんですが、これと次の本は別枠だと思ったので書きます。
ヘンな本。「ランチャーソフト使え!」なんて超即物的な知識と、ソフトウェア開発での考え方とが共存している。
「生産性を上げるには」という課題を達成するためには、ランチャーソフトを使うことが重要なのではなく、探し続けることが必要で、本書で挙げられたツールや考え方は最初の一歩を踏み出すための足場なんだなと感じた。
パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

最近読んだ中では一番ガツンときました。一気読み。いま手元にないので、概要紹介はやめて感じたことだけを。
アレグザンダーが建築の世界で発見した「考え方」を、ウォード・カニンガムケント・ベックがソフトウェア開発の世界にもってきた。彼らは、単純にアレグザンダーの考えた結果を持ってきたのではなく、「考え方」の結果としての「パタン・ランゲージ」を持ってきた。
考え方を考え、考え方の考え方としてのパターンがあることがわかった。パターンであることを見つける、整理する、実践するというパターンを身につけたい。
いきなりですがここから与太。
「無名の質」と呼ばれる「なんかいいかんじ」や「生成的」について、複雑系の考え方を引っ張ってきたくなる。
たとえば、ライフゲーム*1の「なんか生き物っぽい」感じや、複雑ネットワークにおけるバラバシ=アルバートモデルが「生成的」な考え方であるとか。
これまで考えてきたことが相互に繋がりあってへんな感じになりました。